
CASE1
企画開発した再生ポリエチレン袋を、自社物流に活用
ここでは、CLプロジェクトがリサイクル企業・資材メーカー・グループ各社の皆さんと力を合わせて完成させた最初の企画開発品である再生ポリエチレン(PE)原料のポリ袋とシート(※1)を、2022年7月から自社物流「VtoV」の梱包材として使用開始した事例をおはなししたいと思います。
※1…PCR:78%、PIR:22%配合
まず「VtoV」について簡単にご紹介させてください。
「VtoV(Vendor to Vendor)」は私たちCLプロジェクトの所属する豊田通商サプライチェーン本部のメインビジネスのひとつで、世界27ヶ国間の物流ネットワークを活かしたグローバル規模の自動車部品のサプライチェーンです。20年以上続いてきたVtoVビジネスの中で、私たちは「お客様の生産ラインを守ること」をミッションに、常に部品の安定供給・梱包品質・コスト低減・リードタイム短縮・在庫のミニマム化・システム化・・・といった様々な課題に取り組み、自動車部品の最適一貫物流を目指してきましたが、ここ数年でようやく着手することが出来たのがカーボンニュートラル(CN)に対する取り組みです。
コンテナ8,074本分(※2)の自動車部品に対し、プラスチック梱包資材649トン。
これはVtoVが1年間に取り扱う自動車部品の日本からの輸出量と、それらを世界中の自動車製造の現場に安全に輸送するために使用しているプラスチック原料の梱包資材の量です。年間649トンの中には、プチプチという呼称でお馴染みの気泡緩衝材やミラーマット・トレイなど様々な種類の資材が含まれますが、その中でもポリエチレン原料のPE袋とシートの使用量は最も多く、年間540トン(※3)(プラスチック梱包資材全体の83%!)もの量を消費しており、これはだいたいアフリカゾウ100頭と同じくらいの重さになります。
※2…2023年度実績平均。20Fコンテナ568本、40Fコンテナ7,506本
※3…2023年度実績。取り組みにより30μになった実際の資材重量(405トン)を40μに換算したもの
CLプロジェクトは、このPE袋とシートから始まりました。
今から4年前の2020年、VtoV業務に携わる本部メンバーの多くが日々の業務に忙殺されている中、「何か新しいことにチャレンジしたい」という思いから、「自分たちの仕事にもっと付加価値をつけることが出来るのではないだろうか?」「未来のVtoVのために必要とされることは何だろうか?」という会話がうまれました。話し合いの輪がだんだんと拡がっていき、私たちが必要だと考えたのは、地球環境を意識した取り組みでした。「VtoVをより地球環境にやさしいものにしていきたい」と数人の有志メンバーが立ち上がったのがCLプロジェクトのはじまりです。
メンバーたちが業務の合間をぬって最初に行ったのは、どのような物流資材をどのくらい使っているのかの洗い出しをすることでした。その結果、自分たちのサプライチェーンの中では多くのプラスチック資材が使われていることが分かりました。VtoVビジネス発足当時は再生プラスチックがまだ世の中に浸透していなかったこともあり、原料がバージン材であることは想像出来たのですが、厚みに関しては複数の選択肢がある中でなぜ40μが選ばれたのかすでに誰も分からず、原料・厚みともに見直されることなく、長年にわたり同じ資材が使われていることに気が付きました。ここから私たちは再生プラスチックへの理解を少しずつ深めながら、以下<現状>を<目標>のように変えていくことを目標に掲げて、VtoVで使用するPE袋やシートに対する取り組みを開始しました。
<現状>
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PE袋・シートがもっとも多く使われている(プラスチック資材全体83%)
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原料はバージンプラスチック100%
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様々な部品に適応するように様々なサイズがあるものの、厚みはすべて40μ(ミクロン)
<目標>
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バージンプラスチックを再生プラスチックに置き換える
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PE袋やシートを使用する部品が多いため、使用枚量を減らす代わりに
自動車部品梱包に支障のないミニマムな薄さに変更する(40μ→30μ)
<守らなくてはならないこと>
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コストが大幅に増加しないこと
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梱包品質を保つこと
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現場の作業性を守ること
資材が完成するまでの具体的な内容は「<事業紹介> RECYCLE:再生させる」にてふれていますが、「日本の仕入れ先様から部品を購入して、海外のお客様にお届けする」という物流部分を担うメンバーにとって、「ものづくりの企画開発」というのは今までにない経験で、再生PE袋やシートが完成するまでに約2年の時間を費やしました。しかしながら、安定した品質の再生プラスチックを供給してくれるリサイクラー様、取り扱いが難しい再生プラスチックに悪戦苦闘しながら繰り返し試作を行ってくれた資材メーカー様、今回の取り組みでタッグを組んだグループ会社の仲間たちと出会えたことで、予想外に発生する課題(再生プラスチック特有のべたつき、口開きの悪さによる梱包現場での使いづらさ・・etc)を乗り越えながら、最終的に再生原料100%(PCR78%+PIR22%)、かつ厚みを40μ→30μ(▲25%)に減らした資材を完成させることが出来ました。
今回の企画開発資材と、それまで使用していたバージンプラスチック100%資材のLCAベースでのGHG排出量を外部機関に算出してもらった結果、企画開発品の係数は4.38、バージンプラスチック100%資材の係数は7.93であることが分かりました。(▲45%)
また厚みを減らしたことによりプラスチック使用量も▲25%となるため、今回の取り組みでPE袋・シートが排出する資材量をトータル▲59%とすることが叶いました。(※)
※厚みの変更(▲25%)で残ったGHG75%に対し、
再生原料導入後の55%(▲45%の残り)を乗じると41%が残る =トータル削減値:▲59%
今回の取り組みでプラスチック削減量をゼロにすることは難しいですが、年間XXトンものGHG排出量を削減することが出来ました。これはVtoVが排出しているGHGのほんの一部で、これからまだまだ削減量を増やしていかなくてはなりませんが、この「やってみよう!」という想いから始まった最初の一歩は私たちにとって自信になりました。
現在、当時のメンバーの多くはで世界中に活躍の場を変えていますが、そのときに出来た「廃棄物を残さない物流を目指して」という想いは、今もCLプロジェクトのミッションとして生き続けています。
足元数年を見るのではなく、もっと目線を上に、先に。
これからも更なる挑戦を続けていきます。